日本人と切っても切り離せない米。

同様に日本の象徴である
皇室もまた米と深い
つながりがありました。

皇室と米とのつながりの最たるものは、
何と言っても今上陛下がお手
自ら米を栽培されていらっしゃることです。

ガーデニングだとか趣味の
一環だとか言うわけでなく、
ご公務のひとつに「稲作」があります。

もちろん大規模農業をするわけではありません。

神田(しんでん)は皇居内、
宮中三殿の近くにある
300平方mほど。

ココに水を引き苗をお植えに
なるわけですが、
その前段階として4月に生物研究所
そばの苗代で種もみをお手まきされます。

5月下旬になるとお田植えです。

水を引いた神田に陛下は作業着に
長靴姿でお立ち入りになられ、
200株ほどの苗をお手植えされます。

また水稲だけでなく、
陸稲と粟も種まきされます。

陸稲・粟は陛下お一人ではなく、
皇室ご一家で種まきされるので
こちらはお田植えとは違った
ほのぼの感が。

稲は植えれば後は勝手に
育つと言うわけではありません。

数多くのご公務をお抱えに
なっている陛下に代わって、
日々の世話については
専門のスタッフが手掛けます。

ちなみに、神田では農薬や
除草剤は使用していません。

あくまでも昔ながらの稲作の
スタイルで栽培しています。

そして秋、実りの稲穂を
刈り取る時季には、
陛下お自ら鎌を手にお稲刈りなさいます。

さて、刈り取られた稲ですが籾殻を
除去せねばばりませんので、
籾取りの作業があります。

皇居勤労奉仕の面々で
行われることが多いようです。

また、一部の稲は根付きのまま
神嘗祭(かんなめさい)のため
伊勢神宮へお供えされます。

米は神道において稲作信仰に
起因する霊的価値を
有する穀物とされています。

一年の収穫を祝う大祭である
新嘗祭(にいなめさい)でも
新穀を天皇陛下御自ら神々に奉られ、
また御自らもお召し上がりになられます。

ここで供える米と粟は
皇居内で作付されたもの。

新嘗祭は数ある宮中儀式の中でも
最も重要な祭事の一つです。

期日は11月23日になります。

元来は旧暦11月の2回目の
卯の月の行われていた新嘗祭。

明治5(1873)年の太陽暦導入に
伴ってその年の11月の2回目の
卯の月が11月23日だったことから、
それ以降毎年11月23日に
実施されるようになりました。

また同年10月に発布された
太政官第344号布告により
新嘗祭は祝祭日に制定されます。

そして太平洋戦争後、
国民の祝日に関する
法律が制定され、
新嘗祭の日である11月23日は
その精神を引き継いで
勤労感謝の日と改められました。

その名の通り勤労感謝の日とは

「勤労を尊び、生産を祝い、
 国民たがいに感謝し合う日」です。

祝われる勤労と生産の
象徴であるのが稲作。

皇室による稲作は大昔から
あったものではありません。

明治期より神田はありましたが、
昭和2(1927)年に昭和天皇が
赤坂離宮内苑菖蒲池そばの
神田ではじめたものが現在に
引き継がれているのです。

農業の奨励と農家の苦労を
偲ぶために始めたとされており、
昭和天皇に稲作を勧めたのは、
当時の侍従次長でのちに
参議院議長となった
河井彌八(かわいやはち)でした。

河井の日記には

「聖上陛下御親や田植えを遊ばさる。

 真に恐懼(きょうく・恐れ多い)とも
 歓喜とも名状し難き思あり」

とその感慨が述べられています。

そして昭和天皇の思いは
今上陛下にも受け継がれ、
現在も毎年続けられているのです。