昭和天皇が崩御されてから25年。

かつて「参議院のドン」と呼ばれた

元自民党参議院議員会長
村上正邦が、
新刊『だから政治家は嫌われる』
(小学館刊)の中で、
昭和天皇の知られざる
エピソードを明かされています。

多分、昔の人なので覚えて
いる人も少ないと思うけど、
重宗雄三さんという参議院議長を
されていた方がおられてね。

佐藤栄作内閣の頃に、
参議院議長をされていた。

これはその重宗さん
から聞いた話だ。

インドネシアのスカルノ大統領が
日本にお見えになった時に、
天皇陛下(昭和天皇)の
主催で晩餐会が開かれた。

その時に議長夫妻が
晩餐会に呼ばれたんだ。

重宗さんは大崎にご自宅があって、
議長はちゃんとモーニングを着て、
車寄せに車が来たから、車に乗った。

ところが奥さんが
なかなか出て来ない。

「おい、どうしたんだ」と、
声をかけたら、奥さんが
あたふたと出て来た。

いったん車に乗ったが

「あら、あら、忘れ物」って
言って出て行き、
玄関までお見送りに出ていた
小学生のお孫ちゃんに、

「私の部屋の、鏡台の上に指輪を
忘れたから、持って来てよ」って。

重宗さんが

「もう、そんな時間はないよ」
って言ったら、
奥さんは
「じゃあ、その指輪でいいわ」

って言って、お孫ちゃんがしてた
ガラスの指輪をもらって、
奥さんはその指輪をして、
皇居へ行った。

小学生の女の子がしていた
オモチャのガラスの指輪ですよ。

だけど、はめた瞬間、
そんなことは忘れてしまっている。

それで、晩餐会の席へ出た。

そしたら、陛下、昭和天皇が、

「おい、重宗」と、声を
かけられたって言うんだ。

それで、晩餐会の席へ出た。

昭和天皇は、くん付けだとか、
さん付けはしないからね、
戦前の習慣で。

「おい、重宗」と。

「お前の奥は素晴らしい
 指輪をしてるな。
 キラキラ光ってる」

陛下が言われたというんだ。

本物の宝石よりガラスの方が
シャンデリアの光に
反射してよく光るんだ。

そう言われた瞬間に、
重宗さんははっと気づいて、
冷汗がタラタラっと出たって言うんだ。

それで、
「あれはニセモノです。
 ガラス細工です」って、

こう言った。

すると、陛下は
こう仰ったと言うんだ。

「ガラスはニセモノか?」

陛下に、ニセモノも本物も
ないじゃないかって、
こう言われたことに、重宗議長は、

「凡人の我々を超越したところに、
 陛下は常にお考えがあるんだと言う
 ことがそれでわかった」と、

「陛下って言うのは
 そういうお方なんだ」

ということを、お話くださった。

この話を聞いて、私は、陛下の
素晴らしさはもちろんだけれども、
ざっくばらんにこういう話ができる
重宗さんも偉いなって思ったね。