今回は、自衛隊にまつわる
エピソードをご紹介致します。

この逸話は、海自の方で
知らぬ者のない程に有名なもので、
あらゆる海外のプレスも、賞賛と共に
こぞって記事にしたものです。

2000年7月のこと。

20世紀最後のアメリカ独立記念日を
祝う洋上式典に参加するため、
世界各国の帆船170隻、
各国の海軍の艦艇70隻が
ニューヨーク港に集まりました。

翌日には、イギリスの豪華客船
「クイーンエリザベス号」
入港してきたのですが、
折悪しくも(おりあしくも)
2ノット半、時速4.6㌔の急流と
なっていたハドソン河。

その流れに押された巨大な客船は、
あれよあれよという間もなく、
係留中の海上自衛隊の艦艇「かしま」
船首部分に接触してしまいました。

真っ青になる英国
クィーンエリザベス号の乗組員。

接触事故を起こしてしまった相手は
他国の「軍艦」です。

自動車の駐車場で他車にこすってしまっただけでも
どうしよう・・・と焦ってしまうものです。

それが他国の軍艦とあっては、
いかにクィーンエリザベス号といえども、
事と次第によっては国際問題にも
なりかねない事態です。

接触後なんとか、無事着岸を済ませた
クィーンエリザベス号からすぐさまに
船長のメッセージを携えた機関長と
一等航海士が謝罪にやってきました。

船長が直接謝罪に来れなかったのは、
着岸直後は船長は船にとどまるのが
国際的ルールだからなのだそうです。

丁重な謝罪を受けた当時の「かしま」
艦長・上田勝恵一等海佐(大佐)
こう返答したと言います。

「幸い損傷も軽かったし、
別段気にしておりません。

それよりも女王陛下にキスされて
光栄に思っております」

クイーンエリザベス号を本物の
エリザベス女王本人に見立てて、
接触事故をキスされたと言い回しで
逆に光栄とまで言った
この機転のきいたスマートな返答は
帝国海軍以来の伝統である
「スマートなユーモア」を地で行く
粋で当意即妙な対応でした。

こういったユーモアの本家本元を
自認する英国人も
皆脱帽したでことでしょう。

この話は、ハドソン川に集結していた
他国海軍や船乗りたちの間で
この逸話は口から口へと語られ、
ニューヨークだけでなく、
全米の発信され、本国ロンドンにも
伝わりました。

さらに「BBC」
「イブニング・スタンダード」などの
メディアもこぞって
この日本のユーモラスで
粋な機転を絶賛したのです。

この事故の、場所が日本と英国の
治外法権地(米国)ということで、
下手に揉めれば両国の論争に発展する
可能性がありました。

また、もしそうなった場合、
両国の威信を少なからず
傷つけることにもなりかねません。

このような状況をスマートにユーモアある
一言で片付けた上田勝恵一等海佐の
対応能力は相当優れていたと言えるでしょう。